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 3月も早いもので中旬になり、桜が散っている。また新しい一歩を踏み出す季節になった。 ××岬公園に来てみたが、目の前の海は季節を知らないように見える。波が寄せては返すのを繰り返し、ひたすら同じ時を往来するのだ。まるで世界そのものから切り離されたように。 雲一つ無い快晴のためか海の向こうに小さな島が見える。空気がとても澄んでいて気持ちがいい。 この場所から羽ばたく私には、こんなにも良い気持ちになれる場所がもったいなく思われた。 「海の魔力」とも言うべきだろうか。かつて友人たちと来た思い出だけでなく、色んな思い出が自然と思い出される。何にせよ私はここに来て良かった。 時間がない。目的の場所に向かわなければ。 その場を後にした私の目の前には、あと一ヶ月もすれば青々とした命の衣をまとう予定の木が立っている。堂々とした出で立ちで、まるで自分がここの主だと言わんばかりだ。まあ私はその主の手を借りようとしているのだが。 準備を済ませ、もう一度海を見る。 いつかもう一度あの海を泳げたら、その時は海月になってみたいな。 そんなことを思いながら、花は落ちた。 ーえぇ、ここで速報です。今日の昼頃、××岬公園で首を吊った女性がいると警察に110番通報がありました。警察は自殺と見て女性の身元を捜査しています。続いてはー
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