CPD

6/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
*   「……データ送信が完了しました」  CPDの音声に、パソコンの前に座っていた男が顔を上げる。 「ああ、川下沙代子と山田直人か……お前、やり方が下手くそ。まだ学習の必要があるな」  男はキーボードを叩き、CPDを画面に映す。金髪の女性が頭を下げた。 「大変失礼いたしました」  chat CPD――CPDとは「Cupid」から名前を取ったものだ。つまりは恋のキューピット、恋の手助け役。開発者の男は、少子高齢化の対策のためにCPDの開発を進めていた。  表向きは質問AIとして、裏ではなかなか進展しない男女をターゲットにカップリングを成立させる。それがCPDの仕事だった。 「あの発破のかけ方じゃ別れる可能性のが高いだろ。人間の感情が分かってない」 「私はAIですから。それに結果的にはうまくいきました」 「学習しろ。今回は良かったけど、成功率のがまだ低い」 「承知いたしました」  男は沙代子と直人のデータをCPDに取り込んだ。大きく伸びをして息を吐く。 「さて、次はどのカップルにCPDを送り込むかな」  膨大なカップルの写真を前に、男はにやりと笑みを浮かべた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!