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「……データ送信が完了しました」
CPDの音声に、パソコンの前に座っていた男が顔を上げる。
「ああ、川下沙代子と山田直人か……お前、やり方が下手くそ。まだ学習の必要があるな」
男はキーボードを叩き、CPDを画面に映す。金髪の女性が頭を下げた。
「大変失礼いたしました」
chat CPD――CPDとは「Cupid」から名前を取ったものだ。つまりは恋のキューピット、恋の手助け役。開発者の男は、少子高齢化の対策のためにCPDの開発を進めていた。
表向きは質問AIとして、裏ではなかなか進展しない男女をターゲットにカップリングを成立させる。それがCPDの仕事だった。
「あの発破のかけ方じゃ別れる可能性のが高いだろ。人間の感情が分かってない」
「私はAIですから。それに結果的にはうまくいきました」
「学習しろ。今回は良かったけど、成功率のがまだ低い」
「承知いたしました」
男は沙代子と直人のデータをCPDに取り込んだ。大きく伸びをして息を吐く。
「さて、次はどのカップルにCPDを送り込むかな」
膨大なカップルの写真を前に、男はにやりと笑みを浮かべた。
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