CPD

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「ねえ、直人と結婚してもいいと思う?」  ファンデーションをパフに取り、顔にぱたぱたと慌ただしく押し付けながら沙代子はスマホに問う。時刻は朝の6時。襖1枚隔てた隣の部屋では、話題の直人がいびきをかいている。  沙代子のスマホの画面には、金髪の女性のアバターが映っており、その女は沙代子の質問に少し首を傾げる仕草をした。そして淡々と答える。 「いえ、しない方が良いと思います」 「なんでぇ? ……いや、理由はわかってるけどさ……直人、すぐ仕事辞めるし短気だし」 「その通りです」  機械的な返事を返す、画面の中の金髪の女。沙代子は深いため息をついた。CPDが言うならそうよねえ、と呟く。  CPD――それは、近年目覚ましい発達を遂げたチャット式AI、「chat CPD」のこと。金髪の外人女性のアバターが、こちらの質問になんでも答えてくれるというものだ。もちろん法に抵触することに関しては絶対に答えない仕組みになっているが、大抵の質問には答えてくれる。そしてその答えは確実に正しい。
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