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翌日の昼休み、僕は早めに昼食を済ませて、グラウンドに行ってみることにした。誰も誘ってくれないのなら、自分から行けばいいのだ。ちょうどサッカーをしているあたりに着いた時、コロコロとボールが転がってきた。その場にいるクラスメートたちが一斉にこちらを見る。緊張する前に、足がボールを蹴り上げていた。うまいことパスを受け取ってくれた奴が、そのまま自然に、僕のことも試合に入れてくれた。
「何だよ、転校生は運動嫌いなのかと思ってた」
「ううん、運動好きだよ」
久しぶりに笑いながらボールを追いかけて、あんなに長かった昼休みはすぐに終わってしまった。このちょっとの時間ですっかり打ち解けたみんなと教室に戻って、僕は『リク』にメッセージを打った。
『リク、ありがとう。今日はみんなとサッカーできた』
すぐさま返事が表示された。
『やったじゃん。さすがケン!』
それから、何かうまくいかないことを『リク』に相談して、返ってきた返事を基に行動して少しずつ、僕の毎日は楽しいものになっていった。昼休みのサッカーだけじゃなく、登下校時や帰宅後にも一緒に過ごせる友達ができた。最初にサッカーをやった時パスを受け止めてくれたウッチーが本当にいい奴で、僕がクラスに溶け込めるように色々と協力してくれたりもした。クラスの女子とも少しずつ打ち解けることができて、今では誰とでも普通に会話ができる。見晴もいいところだったけれど、ここだって負けず劣らずいいところだった。
『よかったね、ケン。もうつまらなくなんてないだろ』
放課後のチャットの中で、『リク』はそう言った。
『うん! リクのアドバイスのおかげだよ。本当に感謝してる』
そこまで打って送ってから、ふと嫌な予感がして、慌てて続けた。
『学校生活は楽しくなったけど、リクと話すのも楽しいから、……もう終わりとか言わないよな?』
ちょっと間があいて、僕は鼓動が高鳴るのを感じながら画面を見つめた。
『もちろんだよ! ケンが必要としてくれる限り、俺はここにいるよ』
『よかった!』
打ちながら、僕は胸を撫で下ろした。こうして新しい場所に溶け込めたのは、『リク』のお陰だ。急にサービス終了とか言われたら、すごく……寂しいだろう。
『僕は、リクにも本物のリクにも感謝してるんだ。だから、いなくならないでね』
『わかったよ。約束する』
そう、返してくれたのに。
翌日から、『リク』は一切の返信をしてくれなくなった。
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