151人が本棚に入れています
本棚に追加
/53ページ
お父様との思い出も残り、セシルの幸せな思い出も増えていく。なんて素敵なことなのかと、私はルーカスを見つめる。
「私の家は、セシルとイルデさんに譲るわ」
セシルなら大切にしてくれるし、時々遊びに行ってもいいと言ってくれたルーカスに、私は首に腕を回して抱きつく。
「ルーカス、ありがとう! 本当に大好きよ」
こんな幸せな事ってないでしょうって、今度は嬉し涙が止まらない。
お父様が亡くなってから、こんなに喜んだことなんてない。私はギュッと抱きついて、頬にキスをして、ルーカスに何度も何度もお礼を言う。
「お前は……、俺を狼にしたいのか」
抱きつかれて、不意打ちでキスまでして、耳元で好きだなんて、衝動的に襲ってしまいたくなるような可愛いことをするなと、額を押さえたくなる。
「何か言った?」
小さく呟いたルーカスの言葉は私の耳には届かず、つい聞き返したけど、ルーカスに「気にするな」と、あしらわれてしまい、私は首を傾げる。
「さあ、フォリア、戻ってマカロンを食べよう」
「たくさん食べたいっ」
「愛しの妻の願いなら、なんなりと」
ルーカスはそういうと、外に待機させてあった馬車にラーハルドと私を乗せて旅立つ。
「この次は、最高のおもてなしをご用意いたします」
走り出す馬車に向かって王様が頭を下げる。
「ラーハルドのこと、どうぞよろしくお願いいたします」
続いてエリオットが頭を下げた。
それを見たルーカスは、
「近いうちに顔を出す。それまでに良い女性を見つけろ、エリオット」
と、手を挙げる。
「今度は見誤らないようにいたします」
ご迷惑をおかけしましたと、エリオットは容姿や見た目だけで判断などせず、心を見て相手を探すと誓った。
オクタヴィア王都、そこは私の知らない食べ物で溢れる国。
これから出会うたくさんのお料理に、私は胸をときめかせていたのだけど、
「食事制限はする」
なんてルーカスに言われて、頬を膨らませたのは言うまでもない。
おしまい
最初のコメントを投稿しよう!