第05話

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お父様との思い出も残り、セシルの幸せな思い出も増えていく。なんて素敵なことなのかと、私はルーカスを見つめる。 「私の家は、セシルとイルデさんに譲るわ」 セシルなら大切にしてくれるし、時々遊びに行ってもいいと言ってくれたルーカスに、私は首に腕を回して抱きつく。 「ルーカス、ありがとう! 本当に大好きよ」 こんな幸せな事ってないでしょうって、今度は嬉し涙が止まらない。 お父様が亡くなってから、こんなに喜んだことなんてない。私はギュッと抱きついて、頬にキスをして、ルーカスに何度も何度もお礼を言う。 「お前は……、俺を狼にしたいのか」 抱きつかれて、不意打ちでキスまでして、耳元で好きだなんて、衝動的に襲ってしまいたくなるような可愛いことをするなと、額を押さえたくなる。 「何か言った?」 小さく呟いたルーカスの言葉は私の耳には届かず、つい聞き返したけど、ルーカスに「気にするな」と、あしらわれてしまい、私は首を傾げる。 「さあ、フォリア、戻ってマカロンを食べよう」 「たくさん食べたいっ」 「愛しの妻の願いなら、なんなりと」 ルーカスはそういうと、外に待機させてあった馬車にラーハルドと私を乗せて旅立つ。 「この次は、最高のおもてなしをご用意いたします」 走り出す馬車に向かって王様が頭を下げる。 「ラーハルドのこと、どうぞよろしくお願いいたします」 続いてエリオットが頭を下げた。 それを見たルーカスは、 「近いうちに顔を出す。それまでに良い女性を見つけろ、エリオット」 と、手を挙げる。 「今度は見誤らないようにいたします」 ご迷惑をおかけしましたと、エリオットは容姿や見た目だけで判断などせず、心を見て相手を探すと誓った。 オクタヴィア王都、そこは私の知らない食べ物で溢れる国。 これから出会うたくさんのお料理に、私は胸をときめかせていたのだけど、 「食事制限はする」 なんてルーカスに言われて、頬を膨らませたのは言うまでもない。 おしまい
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