第03話

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物々しい空気の中で、アイシャが突然両手を床につき、深く深くルーに頭を下げる。 「顔を見られてしまいました」 フォリアを助けるために、エミーリアに顔を見られたと、アイシャは失態を犯したことへ謝罪を述べる。 「そうか……」 「如何なる罰も受ける所存です」 陰として動くことを命じられているのに、顔を見られるなどあってはならない失態だと、アイシャは首を跳ねても構わないと口にする。 だが、ルーは意外な言葉を口にした。 「好都合だ」 エミーリアに顔を見られたことは、都合がいいと、なぜか口角を緩める。ルーの意図は分からないが、アイシャは許しを得て再度頭を下げると、 「如何なさいますか?」 ルーに指示を仰ぐ。 「アルバーノ家を買い取れ」 「値はいかほどに?」 「言い値の倍だ。足りなければそれ以上でも構わない」 「承知いたしました」 命令が下され、アイシャが窓から姿を消す。フォリアの大切なものを奪われてなるものかと、ルーは屋敷およびその敷地全てを買い取ることを決める。 夜風が冷たく部屋に入り込み、ルーはそっと窓を閉めると(とこ)に戻る。 「ルー、正体を明かしたらどう?」 こうなったら、フォリアを奪うしかないとラーハルドが言うが、ルーは険しい表情をしたまま深く考え込むように、口を開く。 「明かしたところで、フォリアに気持ちがなければ、状況はさらに悪化する」 「それは……」 「この国にいられなくなれば、フォリアを守ってやることが出来なくなる」 今はラーハルドの友人として自由に行動出来ているが、正体を明かせば、皆が態度を変え、監視され、最悪国に戻される。それだけは避けたいと、ルーは時が来るまではどうしても明かせないのだと奥歯を噛み締める。 「ルーの命令なら、フォリアさんだって」 「俺は愛されたいんだ」 権力で縛り付けた愛など欲しくないと、ルーは苦笑する。フォリアはそんな場所で笑ってはくれない、幸せにはなれないと、分かっているから。 「どうするの?」 このままじゃ、フォリアは城に来て、エミーリアに今までと同じように虐げられる。しかもエミーリアが王妃になってしまえば、容易に手を出せなくなるだろうと、ラーハルドが心配する。 「何か方法があるはずだ、しばらく考えさせてくれ」 フォリアを救う方法……、ルーは、何かよい手法はないかと頭を悩ませた。
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