7.推しへの愛は永久に不滅です!

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「あ、の……。どうして途中でやめたの?」  千春から抱いて欲しいと懇願され、香月にとっては垂涎ものだっただろう。  香月は長いため息の末に、恥じいるように顔を両手で覆った。 「俺は医者として最低なんだ……。身体を気遣うフリをして、いつも構いつける理由を探していた。ちぃは明るくて、頑張り屋で、心臓のことがあったって自由に生きていけるのに、あえて縛りつけるような真似ばかりしてきた。そんな俺にちぃを抱く資格があるのか、好きだと伝えていいのかと思い始めたら……続きが出来なかった」  医者としての倫理観と、千春に対する独占欲の狭間で苦しんだ香月を笑えない。千春も似たようなことで悩んでいたからだ。 「私達って似たもの同士だったんだね」  千春は懺悔する香月を抱きしめた。  千春のためならどんな愚かな行動もとってしまう香月がたまらなく愛おしい。 「私が好きになったのは、愚かで最低な香月くんなんだからそれでいいの」 「卑怯な手を使って、結婚を迫った俺を許してくれるのか?」 「大好きだよ、香月くん。一生私の傍にいて……」 「キスしていい?」 「う、ん……」  突然されるのも好きだが、予告されてから徐々に距離が詰まっていくのも最高に好きだ。  香月がどれほど千春を好いているか、思い知らされながら待つ時間がたまらない。  触れるだけの優しいキスはまるで誓いの証のようだった。
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