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「こっちは駄目だよ。危険な植物たちでいっぱいだ」
「なにを言っているの?素敵なものでいっぱいじゃない。こっちの方が暗くてよっぽど危険だわ」
いい加減なことを言う彼に語気が荒くなる。
「いいからここから出して」と迫る私に、彼の言葉が変わることはなかった。
部屋の内側からは何をすることも出来ない。
扉の向こう側に大きな南京錠が掛けられている、と彼に初めて会った時に聞いた。
このわずかな隙間から私が出来ることなど何もない。
目覚めるその時まで、ただ恐怖に怯えながら過ごすだけ。
光を遮らないように体制を変えて、視界から彼の存在を消す。
背中に感じる冷たい無機質な感触にもたれかかると、瞼を閉じた。
寝てしまえばきっと夢から覚めるはず。
惜しくも眠くない身体を休ませると、「また眠るのかい」と、彼の声が聞こえてきた。
「仕方がないじゃない。あなたが出してくれないんだもの」
「眠っても同じことだよ」
馬鹿にされているともとれる彼の言葉に苛立ちが増す。
それでも、この部屋から出るためには、彼の協力が必須だ。
無駄な争いをしても意味がない。
黙り込んだ私に、彼は続けた。
「君はその部屋の奥を見たことがあるかい」
「……奥?」
質問の意味が分からず、思わず尋ねる。
扉の向こうで彼が頷いた気配がした。
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