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「……で、アンタの返事は?」
そう言ってにやりと笑う神楽 朝陽は、絶対に性格が悪いと思う。私の答えを待っているように見せかけて、こっちが焦っているのを楽しんでいるのだから。
どんな返事をしても、きっとこの男に都合よく言い換えられるに違いない。それならば……
「私の勤め先は堂崎コーポレーションで、営業補佐をしています。歳は先月二十五になったばかりで、最終学歴はW大卒業です。他は、確か趣味と特技でしたよね?」
「……へえ、ちゃんと聞いてたのかよ」
別に神楽 朝陽の質問を聞いていなかったわけじゃない。そんなことを聞かれる理由が分からなかっただけで。
だから私は彼の問いに答える形で、返事をして見せたのだった。
「堂崎コーポレーションか、そんな一流企業に勤めてるとは意外だな。容姿もソコソコで学歴も悪くない、残念なのは猪突猛進なその性格ってところか」
「……何一つ褒められてる気がしないんですけど?」
私の両親がわりと進学や就職先に口を出す人たちだったため、それなりの大学を出て一流と言われる堂崎コーポレーションに就職した。
最初から次期社長の椅子が用意されている神楽 朝陽と一緒にしないで欲しい。そう思って、何となく彼から視線を外してそっぽ向いていると……
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