提案は思い付きで

7/12
前へ
/62ページ
次へ
 ただそれが迷惑料とどう関係があるのか分からないが、余計な事を言うと神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)からとんでもない返答がくるような気がして止めておいた。  それが無意味な事だったという事に、数分もせずに気付かされたのだけど。 「近いうちに、アンタと俺はある契約をすることになるだろう。それで、今回の迷惑料はチャラにしてやる」 「……契約って? 内容を聞かなければ、それが出来るかなんて分からないんですけど」  少し考えた様子を見せて、神楽 朝陽はそう提案してきたが内容については一切説明がない。迷惑料がチャラになるのは有難いけれど、受けるかどうかはその契約内容にもよると思うのだけど。 「こちらで契約書は用意しておく、契約内容についてはその日に話せばいいだろう。丁度良い人材が見つかったんだ、やりたくないからと逃げだされても困るしな」 「……その話を受けない、もしくは契約拒否という選択肢は私には無いんですね」  私が逃げ出すような内容なら、きっと碌でもない契約に違いない。ギリギリに話してそのまま契約させてしまおうという魂胆なのか、意外とセコイ手を使うんですねとハッキリ言ってやりたいのに。 「俺と神楽グループに支払う迷惑料、アンタがすぐに払えるというのなら話は別だが」  いつの間にか神楽グループの迷惑料まで付け加えられていて、ぐうの音も出ない。綺麗な顔をしているのに、本当に嫌な男なんだと思い知らされるばかりだ。
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1330人が本棚に入れています
本棚に追加