その契約は強制で

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「もう少し丁寧に扱ってもらえませんか⁉ これでも一応は貴方の恋人役なんでしょう」 「分かってるのなら最後まで気を抜いたりするな、何があっても笑っていろと言ったはずだろう」  そう言われて、この部屋に着くまでがお芝居なのだという事に気付く。社長室を出た後から演技を忘れ素に戻ってしまったので、そんな私に慌てて彼はここまで連れて来たのかもしれない。  父親との会話で機嫌が悪いのもあるのだろう、神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)はいつもよりピリピリとした様子だった。だからといってここで黙って立っている訳にもいかない。さっきの事についてきちんと説明してもらわなくては。 「……それで、私の演技は合格でしたか? 確かそれを確かめるためでもあるって言ってましたよね」 「あんなハッキリと紹介しておいて、別の相手なんか連れて行けるわけないだろう? 多少不満はあるがギリ合格にしておいてやる」  ずいぶん上から目線だなと思ってみると、いつの間にか彼は眼鏡を外していて。過去の経験上、この人が眼鏡を外していると何故か意地悪度と嫌味レベルが増すので私としては全く嬉しくないのだけど。  だからといって眼鏡を外すなとも言いにくいので、私が神楽 朝陽の玩具にされないよう言動に気を付けるしかない。 「それはありがとうございます。これで迷惑料はチャラ、ってわけじゃあないんですよね?」 「当然だろ、むしろこれからが本番なんだ。この先さっきのような中途半端な事をした場合、ペナルティを受けてもらうからな」 「ペナルティですって⁉」
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