その契約は強制で

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 契約の内容を全て聞かないうちから「出来ない」というつもりはない。自分が彼にしたことを考えれば、やれるだけのことはやるべきだという気持ちもある。  だけど私にとって結婚式というのは特別なのものでもあって、簡単にそう話してみせる神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)に少し戸惑っていた。 「結婚式を挙げれば、色々後が面倒になると思います。どうにか式を行わずに済ませることは出来ないんですか?」  私なりに考えて提案をしているつもりだった、その方が絶対にお互いの為になると思えたから。神楽 朝陽もそれを十分に分かっているはずなのに、それでも首を縦には振ることはなかった。 「……鈴凪(すずな)の言いたい事は分かる。だがそれじゃあ駄目なんだ、そんな簡単な事ではきっと揺さぶられないだろうから」 「揺さぶる……?」  彼の言葉の意味が分からなくて続きを待つが、それ以上の事を神楽 朝陽は話そうとはしなかった。どうやら彼も相当訳ありなのかもしれない。こんな私に恋人役をさせるくらいなのだから。  言いにくい事を無理に話させるつもりもない、所詮は契約関係なだけなので恋人役を演じるのに不都合が無ければそれで構わない。そこに特別な感情はないのだからと、この時はそう思っていたのだけれど……
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