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裏切りは計画的に
「朝陽さん、この女をどうします? このまま警察に突き出しましょうか」
耳元で大きな声を出すのは止めて欲しい、きっと神楽 朝陽にも充分聞こえてると思うし。だけどそんな私の考えを見透かしたように、眼鏡のレンズ越しの瞳が細められたことに気付いた。
……多分この男は絶対に性格が悪い、普段あまり役に立たない直感がそう伝えてくる。
「そうだな、せっかくだから俺にこんな挨拶をしてくれた理由を聞いておくのも有りかな。恨みを買う事は珍しくないが、この俺に直接的な攻撃をしてくる女性は稀だから」
「ですが、朝陽様……」
有無を言わせない目付き、とはこういうのを言うのだろうか? スタイリッシュな眼鏡の奥の瞳は、切れ長でそれだけで相手を圧する強さがあった。
婚約破棄されたことで感情的になってここまで来たが、喧嘩を売る相手を間違えてしまった気もする。だけど……
「アナタの所為でしょう? アナタが【階級別社員雇用システム】なんて訳の分からない計画を立てるから、私は流に婚約破棄されたのに」
「……なんの話だ、それは?」
私の言葉に神楽 朝陽は首を傾げて見せた。後ろの取り巻き立ちも同様に、彼とポーズをとって見せるからちょっと鬱陶しい。でも、計画を立てたであろう本人が知らないってどういう事?
「流、とは?」
「守里 流、彼は営業部のエースで……」
急に自信が無くなって、どんどん小さくなっていく私の声を彼は聞き逃さない。
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