その契約は強制で

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 ちょっと待って! いきなり距離を詰めないで! 慣れた仕草で腰へ腕を回さないで! って、焦れば焦るほどに頭の中はパニックになり冷静な受け答えが出来なくなる。  これは仕事のはずなのに、そこにハグやキスが必要ですか? それだけでなく、神楽(かぐら) 朝陽(あさひ)は私の肌に触れていいかとまで聞いてきたのだ。 「いっ、いいわけないでしょーが! この……ドS御曹司!」 「いって! 鈴凪、おまえな……」  腕を回され引き寄せられたことで慌てた私、気付いたら朝陽さんのお腹に思い切り肘打ちしてしまっていた。かなり痛かったのか、彼がギロリと睨んでくるけれどそれどころじゃない。  至近距離で嗅いだ朝陽さんの香水の香りのせいか、何だか身体が火照ってる気がして。  ……うう、全部朝陽さんが悪い! 変な事を聞いてきて、その上許可なく触れてきた朝陽さんがいけないんです! 「わ、私の所為じゃないですよね!? フリなんだから相手に触る必要なんてないし、愛情だって言葉で伝えることが出来ますから」 「……へえ? じゃあ鈴凪(すずな)は言葉だけで、相手に愛されてるって満足出来てたって事?」  え、それを聞いてくるんですか? いくら何でも数回会っただけの朝陽さんに、そこまでぶっちゃけて話す勇気はない。  もし話したところで、この人が真剣に聞いてくれるかも分からないのに。なんて考えていると……
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