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「営業部のエース、守里 《ながれ》流だそうだ。知っているか、濃野?」
「ああ、あの有名な守里ですか……?」
有名と言われて何となくホッとした、やはり流はこの会社で優秀な社員で間違ってなかったのだと。だけど、そう話しかけた男性の表情が苦虫を噛み潰したようなものだったことに不安も感じていて。
それを誤魔化すために、必要以上に強気な態度に出る。そんなことしても私が拘束されている事に変わりはないのだが。
「そうよ、その守里 流! 彼をクビにするなんて、貴方どうかしてるんじゃないの?」
「おい、そうなのか?」
神楽 朝陽はそんなこと初めて知った、と言わんばかりにさっきの男性にその事実を確かめている。どうなっているの? 流は確かにこの人の所為で、自分は神楽グループをクビになると私に話したのに……
何かが嚙み合わない、そう気付いた時にはもう遅かった。私がとった行動が元カレの流にとって予想外だなんて思いもしてなかったから。
「守里 流は営業部でも有名ですよ、万年営業成績最下位の給料泥棒だと。それにとても女癖が悪い、取引相手の奥さんにまで手を出した事があるという噂もありましたし」
「流が、営業成績最下位? 取引先の奥さんに手を出していた……って、え?」
……何それ? 私はそんな話、流から一度だって聞いてない。
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