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「それに……あの方の遊び相手の一人でもありますしね」
「へえ、そうなのか」
取り巻きの男性の言葉にさして興味がないというように返事をした神楽 朝陽だったが、私はほんの一瞬だけ彼が眉を寄せたのを見逃さなかった。でも、あの方いうのは……?
いいえ、そんなことはどうだっていい。今ちゃんとハッキリさせなければならないのは、元カレの流のことに変わりない。今の話が本当なのならば、私の婚約破棄は何のためだったというのか?
「で、でも! 流は貴方の決めた計画でクビになるから、私とは結婚できないって……!」
「そんなこと俺が知るわけないだろう? おおかた、浮気相手に子供でも出来たってところじゃないのか」
そんなことを平気そうな顔で言われて、体中の血液が沸騰するかと思った。他人事なのは仕方ない。でも冗談とかではなく彼はそれを一つの可能性として、流の元婚約者である私に話してくるのだ。
自分にとってはどうでもいい事だ、と言わんばかりに。
「一つだけ、きちんと説明しておく。俺は【階級別社員雇用システム】なんてものは計画していないし、神楽グループは徹底した実力主義の雇用システムだ。その男がクビになるのなら、それはただの努力不足だろう」
「そんな……」
ずっと流は私に自分は一流企業のエリートだと話していた。結婚して二人で幸せな家庭を作ろうって言葉も、裏が疑うとなく信じて。だから………
そこで私はとても大事なことを忘れていたことに気付いた。
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