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「流……?」
美人で品のある女性の隣を歩いているのは、元婚約者の守里 流だった。彼は私がここにいる事にも気付きもせず、横にいるキャリアウーマンと言った感じの美女に話しかけていた。
「もう別れた」「俺の本気」とは? クビになるから、私と結婚出来ない。だから別れて欲しいって、流は私にそう言ったよね? 頭の中が混乱する、流の言葉と今の彼の言動は全く一致してなくて。
「……へえ、あれが守里 流か。どこがいいんだ、あんな男の?」
「…………」
神楽 朝陽の嫌味な問いかけに応えるような余裕も今はない、ただ目の前の現実を理解するので精一杯で。
「しかし、隣にいるのは鵜野宮 梨乃佳か。まさか、高嶺の花と呼ばれる彼女があんな男を相手するとはな」
「あんなのは、梨乃佳様の遊び相手に過ぎないでしょう」
神楽 朝陽の呟きに、取り巻きの一人がすかさずフォローを入れる。それが鵜野宮 梨乃佳という女性に対してなのか、それとも神楽に対してのフォローなのかがよく分からなかったが。
そもそも今の私には他人の事を気にしている余裕などない。だが、この状態を流に見られたくもない。なのに、神様はどこまでも残酷で……
「あら? 何かあったのかしら」
「え? ああ、なんか人が集まって……ん? もしかして、あれは鈴凪?」
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