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prologue
「アナタが神楽 朝陽さん? 出会って早々で悪いけど、取り合えず一発殴らせてもらいます!」
「は? え、おいっ⁉ ……っぐ!」
すぐに標的を殴れるようにと準備しておいた拳を、その男めがけて遠慮なく繰り出した。突然現れた女に殴られることなど予想しなかったであろう、その男性は私の拳を顔面で受け止める羽目になったのだが。
それでも私の怒りはとてもじゃないが納まらない。この男の所為で自分の人生が大きく狂わされたのだと思うと、後二~三発ほど殴らせてもらいたいくらいで。
「お前、なんてことをしてるんだ! この男性が誰なのかを知らないのか⁉」
「いいえ、ちゃんと知ってますよ。神楽 朝陽、この神楽グループの御曹司でしょう。最初に名前を確認したじゃない」
コイツの取り巻きか何からしい男が私に真っ青な顔してわあわあ言ってくるけれど、そんなこと知った事じゃない。私がここまでするのにはちゃんと理由がある、これは立派な敵討ちなんだから。
「……へえ、じゃあ貴女は俺を神楽 朝陽だと知ったうえでこの暴挙に出たと? 随分勇気ある女性だ、面白い」
「そう? 私は全然面白くないけれど。こういうのがお好きなら、もっと殴って差し上げましょうか?」
そうは言ったものの、すでに私は数人の男性から身体を拘束されているので実現するのは難しいだろう。
一回だけなのに殴った拳はジンジンと痛いし、ギリギリと複数人に抑えつけられていて窮屈だ。
……これも全部、元はと言えばこの男が考えたという【階級別社員雇用システム】とやらの所為だというのに。薄っすらと意地の悪い笑みを浮かべる神楽 朝陽を私は負けじと睨み返していた。
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