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「あたしたちはやっぱり、運命ね」  今でも私が思い出すのは、耳元で囁かれたとろけるように甘美な誘惑と、やわやわと絡みつく滑らかな肌。  その肌は、私が欲しいままに口づけ、舌を這わせるうち、次第に熱を帯びしっとりと潤んでいきました ――  彼女のわずかに濡れた唇からもれる、吐息とともに。 「いいっ…… イク、もうイっちゃう、お兄ちゃん…… 」  24年前のあの夏の夜。  背徳感や罪悪感は単に、より深く快楽に溺れるためのクスリでしかありませんでした。  ―― もし、あのとき、妻が一緒に来てくれていたら。  ―― もし、妻が、何年も私を拒み続けていなかったら。  私たちは今も、素知らぬ顔をして 『きょうだい』 を演じ続けていたでしょう。  けれどもあの、母の初盆の夜。  私の妹は長いあいだ隠してきた情念をあらわにし、それに私は、やすやすととらわれてしまったのでした。
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