10

1/1
前へ
/14ページ
次へ

10

 どうやって山を登ったのか、わかりません。  気づくと私は、大きな噴火口をのぞきこんでいました。  強い風。  ガスがすっかり吹き払われて、火口の底には夜をうつした、くらい水がよどんでいます。  そのしたにはきっと、燃えたぎるマグマがうねっていることでしょう。 「 K 」  私は妹の名を呼んでいました。 「そこにいたのか、あいたかった」  水の底から妹の声が響きます。 ―― あたしたちはやっぱり、運命ね。 ―― もう絶対に離さないわ  私のからだが、なにものかに引っぱられます。  いや、考えるまでもない。  こんなことをするのは、妹よりほか、いないでしょう。  もうなんでもいい。    私はもう疲れた。  もう、考えたくない。  なぜ憎まれるのかも、どこで間違ったのかも。  もう、なんでもいい。  妹よ、おまえが私を殺すなら、それはそれでかまわない。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加