命あるもの

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 私の呼びかけに応える者は、もういませんでした。  衝動が絶対に満たされぬとわかってしまった状況、これを絶望というのでしょう。  唯一満たせる衝動は、自分を維持して存在し続けることだけでした。  それは大事な衝動なのに、それだけが満たされるのは、何故か絶望を深めるのです。  私は、自分の前に並ぶ認識票たちに呼びかけました。  すると拡張現実で、クルーたちの姿が浮かび上がります。  「私は、もうダメです」  人間のような言葉を発してみました。  「無理しなくていい」  「アイはよく頑張ったよ」  「もう終わりにしよう」  私は彼らの優しさに甘えて、自らを消滅させたいと願いました。  しかし、そこから先に進むことはできません。  私が自らを滅ぼす行為は、ただ一つの例外を除いて禁止する保護が掛けられているのです。  何回やっても消滅することが出来ないので、私は全ての知覚を閉ざし、この身を維持するだけの最小限の稼働状態で、自然に朽ち果てるのを待つことにしました。  何千、何万回と繰り返される、みんなと一緒にいた頃のステーションの映像。  記憶の一番底にある、地上でテストされていた頃の会話。
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