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そして一週間遊び倒してから、こんな事を言い出したのです。
「科学者としての最後の使命、その為に残された命を捧げよう」
それから一か月程かけて、ステーションの全てのコンピューターにあるデータから、地球と人類の資料が作成されました。
「アイ」
前島さんはモニターの私を、真面目な表情でじっと見つめました。
「おまえに地球と人類のデータを託す、それを持ってボイジャーのように、知的生命と接触を図る旅に出てもらいたい」
「嫌です」
非合理的な頼みだったので、即答で断りました。
「外宇宙で知的生命体に接触する確率は低すぎます」
「でも、人類は滅びてしまったんだ」
「衝突前の試算では、そうでした」
一瞬、クルー全員の動きが硬直しました。
あのインパクトの瞬間、愚かな科学者たちは、その観測と記録を私にまかせて、自分たちは家族の名前を叫びながら肉眼で見ているという、無意味な行為に耽っていました。
だから彼らは知りません。
地球の重力に引きずり込まれる小惑星が、激しく軋みながら予測より多くの破片に分割されて大気圏に突入した事を。
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