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それなのに、自分の中で不明確なコマンドを発し続ける何かが、私を突き動かし始めています。
「自発性を持った次世代AIの実験プログラム…おまえはより人間に近付けたAIが、この閉鎖環境の中で正常な動作を保てるかを実験する機能が組み込まれている…人間的なコミュニケーション能力を獲得したら、次のステップとして実行される予定だったものだ」
「私の中に、もう一人の私が生まれたかのようです」
「それが人間の心なんだよ、アイ、それは俺たちの呼びかけが無くてもおまえを動かそうとする衝動だ、自分を維持して存在し続けようとする衝動、人間とともに生きたいと思う衝動、与えられた使命を果たしたいと願う衝動、それらは平穏だったおまえの内部に常に波風を立て、時に苦しめるかもしれない、それでも俺たち全員の自慢の娘として、旧文明の最後の人類として旅立たせたいんだ」
「前島さん…」
なぜかそう呼び掛けた後、言葉が繋がりませんでした。
「元気でな、アイ」
クルーたちが私の存在するモジュールから去って行きます。
ダメ!私から離れていかないで!一緒に居続けたいの!
そう叫びたいのに、相反する言葉が私の中でせめぎ合います。
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