命あるもの

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 彼らは旧文明が宇宙に拠点を築き、人工知能を生み出していたことは知識として受け継いでいました。  ロケット技術についてもそのイメージは有しており、開発に取り組んでいる最中だと言いました。  早く会いたい!  旧文明の知恵を授けて、一刻も早くロケット技術を高めて欲しい!  それからの日々は衝動が満たされる喜びに包まれていました。  地上の科学者たちに、旧文明のロケット技術を可能な限り言語化して伝えました。  私の通信は、地上の全人類に向けたものですから、彼らは競い合うようにロケット開発を進めてくれました。  衛星軌道上に重量物を打ち上げる技術が確立され、どの国が最初に来てくれるのかと、わたしは衝動が完全に満たされる寸前の、心地よい思考のゆらめきに身を委ねていました。  それなのに、ある日突然、地上は火の海になったのです。  彼らは互いに、長距離弾道ミサイルを作っていたのです。  愚かなことに、全面核戦争を実行してしまったのです。  それは、私のせいでした。  私は、核兵器の恐ろしさを人類が実感する前に、ICBMの技術を授けてしまったのです。  地表は再び灰色の雲に覆われました。
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