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#day1[ファイル2]
「ここがその豪邸か~!」
私たちが見るからにお金持ちが住んでそうな豪邸の前にたどり着くと1つ忘れていたことを私が斗真に聞く。
「斗真。これからその依頼人にも会うけど大丈夫?」
そう。さっきもいったように、斗真は極度の人見知り。依頼人と会って硬直しないか心配なのだ。
「…。大丈夫だ。問題ない。」
「…。そうか…。」
そう言って斗真が依頼人達がいるその豪邸のインターホンを鳴らす。そして今度は戒晴が私に近づいて聞いてきた。
「斗真って…たまーによくわかんない時あるよなぁ~。いつも無表情だけど…。」
「…。そうだね…。」
私達がそんな話をしていると家の中から若い女性の使用人さんが出て来てくれたので、自己紹介をする。
「プレベント所属のクラストヒアリングの『探偵』、柏木瑠衣です。ここのお嬢様が誘拐されたとの事で伺いました。お話をお聞きしてもよろしいですか?」
私が自己紹介をすると使用人さんはどうぞと豪邸の中に入れてくれた。そうすると背の高い誘拐された娘の母親らしき人が私達に近付いてきた。
「プレベントの探偵さんですか!?お願いします…!娘を…娘を助けて下さい…!」
私の肩を両手で勢いよく掴んで来たので、私は思わず床に倒れそうになり、焦った。
「落ち着いて下さい…!ひとまず、状況の整理をしたいので、貴方達と、娘さんのお名前をお聞きしても宜しいですか?」
私が母親らしき人にそう言うと、その人は私の肩から手を放し、謝ってくれた。
「あ…私は芝浦文佳(しばうらあやか)…です…。この人は私の旦那の芝浦晶人(しばうらあきと)。で…誘拐されたのが私の娘の鮫崎紫音(さめざきしおん)です…。」
芝浦夫妻は顔が凄く青ざめており、尋常じゃないほど震えていた。そしてここで、私にはある疑問が浮かんだ。
「芝浦…?確か…娘さんの苗字は鮫崎でしたよね?何故ですか?」
そう…芝浦夫妻の苗字が『芝浦』なら、当然娘の紫音さんの苗字も『芝浦』になるはず…。なのに文佳さんは娘の名前は『鮫崎紫音』だと教えてくれた。
「じつは…私は子供が産めない病気なんです。」
「なるほど…。」
なのに娘さんがいるってことはもしかして…。
「まだ赤ちゃんだった紫音は、ある雨の日、布で包まれて段ボールに入れられてたんです。『この子は要らないのでもうあげます。ちなみに名前は鮫崎紫音です。』と書かれた紙と共に…。」
文佳さんの悲しげな瞳から涙が溢れだし、崩れてしまった。崩れてしまった文佳さんを見ていると、後ろから声が聞こえてきた。使用人さんでもなく、戒晴でもない低い声が。
「…。何か言ったのか?」
「え…?」
「その義理の娘に…何か言ったのか?」
「斗真…?」
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