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「シャリーン?」
「にゃん」
目の前の多分シャリーンな猫の頭は、だいたい3ヶ月前と同じように僕を見上げた。そうして、僕はソフィーの部屋の掃除をして、役所の人に連絡をした。
「この部屋を凍結されるということでよろしいですか?」
「はい。お願い致します」
「……あなたはどうされるんですか?」
役所の人は、小さなリュックを背負って首輪をつけたシャリーンを抱く僕を見た。
「僕は……この猫と一緒に街の外に出たいと思います」
「外へ……? あなたはアンドロイドでしょうから大丈夫でしょうが、その猫は死んでしまいます」
「いえ、このシャリーンもアンドロイドなので」
シャリーンはくるりと体を丸めて僕の腕の中で器用に右足を舐めていた。
「かわいい猫ちゃんですね」
「ええ。ソフィーがかわいがっていました」
「そうですか。ではこの部屋は責任を持って凍結致しますので、ご安心ください」
「ありがとうございます」
そう挨拶して、久しぶりに外に出た。
きれいに晴れていて、太陽が空の真ん中高くに登っていた。
ソフィーは本物の外を見たがっていた。けれども外は今、人間が生きられない場所だと聞く。
僕は760年分シャリーンと過ごし、シャリーンと一緒に740年分ソフィーとの記録を繰り返した。たくさんの言葉と外出と暮らし。ソフィーはいつもシャリーンにだけ話しかけ、僕には話しかけなかった。多分ソフィーが先に何か合ったときにそなえて、シャリーンの面倒を見るためにソフィーは僕を伴侶に登録したんだろう。だからシャリーンが死んでしまったとき、僕の存在には意味がなかったんだ。
ソフィーはAIとかアンドロイドとかは嫌いだった。自然じゃないから。
ソフィーが、結局の所ソフィーが一番望んでいたのは外に行くことだった。それはソフィーが動かなくなってからの1日ほどで生じたソフィーに再び活動をしてほしいという僕の情動と比べて、とても長い間のソフィーの願いだと思う。
その1500年分のログの切れ端がシャリーンと同じように僕のどこかに降り積もり、僕の中の意志の方向性を変化させたのかもしれない。
結局のところ、僕はシャリーンを作れたのかはよくわからない。
けれども今日、僕は僕のシャリーンと一緒にこの家を出ていくことにする。
それがきっとソフィーのしたかったことだから。
Fin
(煮えきらないからあとで直す)
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