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相当の現場を踏んだ。
数々の命を救った。
その分、ひどい現場も見た。
救出の過程で持ち堪えられない人もいた。
またある時は、人間にはできない処理もしてきた。
――もう、学習することもないくらい、多くのパターンを収集してした。
となると、次に学習することは決まってる。
自身は熱さも苦しさも感じなくとも、人を見て彼は学んだ。
恐怖、絶望、悲しみ……そういった類の感情を。そのうえで、ギーズは最善を選択し、逃げ出して来たのだった。
「火は怖いんです……とても」
これ以上は進めません。これ以上むことは恐ろしいこと……。私は間違っていますか? あなた達も、そうでしょう? と、ギーズは消防士たちを見渡す。その瞳からは、透明の潤滑油が漏れ出していて、それはまるで涙のようだった。
******
最後となった現場で、自身にとっての最善を選択した。その結果、ギーズは廃棄された。だが、最後にこんなことも言っていた。
「ほんとうに人を救えるのは、人だと思いますよ」
そして、廃棄されることを、とても喜んでいた。
おわり
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