SINGULAR TRIANGLE

8/8
前へ
/8ページ
次へ
「俺は、家事をしてくれている妻が出迎えてくれる家庭に帰れることが理想だった。でも、俺が家庭に携われる時間が無いから、ロボットに頼むことにした。こいつの言う通り、俺は仕事中に家庭の事なんて考えられないようなろくでなしだ。だが、安息の場に返ってこれば、それを調えていてくれる存在がいることで、疲れが幾分と取れて安らげる」 「じゃあ私なんか——」 「けど! お前を愛して家庭を築きたいと思ったのは事実だ。ロボットにシステム化された毎日なんて、いずれ退屈になる。俺にはお前が必要なんだ。家事をロボットに任せていても、お前はそのロボットを労わることを忘れない。ちゃんと家庭の事を考えて、守って、疲れた俺を迎えてくれた。だから、俺はそんなお前を守れる人間でありたい。お前は俺の生き甲斐なんだ」  夫は、つい熱の籠った愛情表現をしていました。妻の警戒心は、ゆっくりと融けていきました。 「やればできるじゃないですか。旦那様は口下手なんかじゃありません。思いやる時間が足りなかっただけです」  ちゃんと妻を愛せると分かった夫に、少しの自信が湧いてきたのでした。 「ありがとう」  妻の言葉は、プロポーズの時と同じくらい、心からのものでした。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加