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昔々、いや、未来も未来。或る所に結婚後間も無い夫妻がおりました。夫妻は共働きであったため、二人は家事を行うのに、充分な時間も労力も無かったのです。
妻は「二人で家事を分担しよう」と提案しました。しかし、夫はあまりそれに乗り気ではありませんでした。代わりに夫がこう提案しました。「家事は全てAIに任せてしまおう」
貯蓄には余裕があったため、妻は夫の意見に賛同しました。家事に割く時間が要らなければ、仕事に充てられる時間が増えます。それは、二人にとって迚も楽になるのでした。
新居のマンションに引っ越し、家財の搬入が行われると同時に、家事代行AIロボットが到着しました。夫は説明書を基に設定を行うと、生気の無かったロボットに、徐々に息が吹き込まれていきました。
ロボットは人の形をしており、媚びない程度に愛らしいデザインでした。設定の読み込みが終了すると、ロボットは二本の脚で直立し、設定どおりの日本語で話し始めたのです。夫妻とロボットはお互いに自己紹介をしました。ロボットの動きは、人間と比べると無骨なところが多いですが、話し方は人間と遜色がありませんでした。
「これからよろしくね」
「よろしくな」
「はい。不束者ではございますが、本日よりよろしくお願いします」
穏やかな口調で答えるAIロボットに、夫妻は新しい家族ができたように思えたのでした。
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