山下こころの場合(1)

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山下こころの場合(1)

ステージの上に立つ一人の少女。 私があの女の子をアイドルとして推せるのはこれが最後だ。 今日、私の推しはアイドルを辞める。 ──2か月前── 「推しは推せるうちに推せ」 よく聞く言葉だ。 でもまさか自分がそのことを身にしみて感じることになるとは思っていもみなかった。 私の推しは白石ひめかだ。 今一番人気のアイドル。 だけどそんな彼女が炎上した。 炎上の理由は熱愛疑惑。 最初に記事を見たときは何を言っているんだと思った。 私の推しはファンを大事にしてる人だし、証拠写真として出ていた画像は明らかに彼女の過去写真を加工したものだった。 でも、真実は彼女にしかわからない。 とにかく嘘であって欲しかった。 はやく彼女の口から「違うよ」という言葉を聞きたかった。 高校時代。 私はクラスの派手な女の子たちのグループにいじめられていた。 「なんであの女あんなダサイの。」 「しかもまじブスすぎだし。」 「自分のこと鏡で見たことないんじゃね?笑」 こそこそ笑う声が聞こえてくる。 そりゃ私だって自分がかわいいなんて全く思ってない。 でもそれを自分で思うのと人に言われるのじゃ全然違う。いつしか私は鏡を見れなくなってしまった。 そんな時に出会ったのが彼女だった。
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