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白石ひめかの場合(2)
──1か月後──
その日、私はたった一人で夕方の街中を歩いていた。
実はこの頃からアイドルを辞めることを考えていた。
理由は誹謗中傷によるパニック障害。
炎上は未だに続いていた。
批判ってこんなにも冷たくて怖いんだ。
街を歩いていても常に誰かに悪口を言われているように感じる。
それなのに街並みは夕焼けに照らされてキラキラ輝いていた。
フードを深く被って下を向いて歩いている私とはまるで正反対だった。
「あの。」
私はどうしてこうなってしまったのだろう。
結局いつまでも幸せになんかなれないのだろうか。
あの頃みたいにまた一人ぼっちになってしまうのだろうか。
「あ、あの!ハンカチ落とされましたよ!」
近距離で響く声に思わず私の肩がびくっと震える。
私は自分が話しかけられていたことに初めて気がついた。
「ありがとうございます...。」
ハンカチを落としていたことなんて全く気が付かなかった。
そうして渡されたハンカチは私の芸能界デビューが決まったときに母が送ってきてくれたものだった。
それを見ると思わず涙が溢れてしまった。
「え、大丈夫ですか!?」
高校生ぐらいの女の子だった。
明らかに年下の子にこんな惨めな姿は見せたくなかった。
だけど、
「え、あれ?もしかして...。」
彼女は私のファンでこころという名前の子だった。
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