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「確かに望愛の言うとおり、距離的にはそれほど問題なわけじゃない。だけどそれでもおばさんがうちの母さんにこぼしてたらしい。"なんだか遠くにいっちゃったみたい"って」
「…遠くにって…。お母さん、私にはそんなこと一言も…」
「言えるわけねえだろ? 娘はそれで幸せそうに笑ってるんだから。自分の本当の気持ち押し殺してでも応援すると思うよ、特におばさんみたいな人はな」
…お母さん……
「それに、俺も今日、あの会社に行って同じこと思ったよ。あ、俺の場合は少し違うけど」
「違うって…?」
「望愛にあの場所は似合わねえよ。それにあんな会社の社長だろ? 家だって暮らしぶりだって望愛の家とは全然違うだろ?」
「それは…そうだけど…」
…そんなことはわかっている。
始めの頃は大きな家や贅沢なキッチンや器具に…驚いたりはしたけれど、渉さんも会長も、華やかではあるけれど、派手に暮らしているわけではない。
私もそこに…ほんの少しは馴染めていると思っていたのに…。
「…無理してるんじゃないのか?」
まるで私の心の中を読むように雅也君が言った。
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