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「…無理なんかしてないよ」
無理なんかしてない。
私は確かめるように心の中でもう一度呟いた。
「私がこんな風に言うのはおこがましいけど…、遠野の家の皆さんは私を受け入れてくれているし、私もあの家にいるのは心地いいの」
私が言うと雅也君はじっと私を見つめため息をついた。
「"おこがましい"って言うところが、そもそももう引け目感じてるだろ?」
「…え? そんなつもりじゃ…」
「そんなつもりじゃなくても、それが出てるだろ」
雅也君は少し強い口調で言い切った。そしてその後、私をなだめるように、先程よりもいっそう穏やかな口調で付け足した。
「望愛…。今なら引き返せる」と。
「俺の仕事はどこでだってできるし、それでも収入も十部あるし望愛やおばさんを困らせるようなことにはならない。おばさんも、うちの親もそばにいて、みんなで望愛を守れるし、みんなのことも守ってやれる。望愛だって、本当はおばさんのそばにいたいんじゃないのか?」
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