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私たちが慌てて離れると、部屋のドアが開いて雅也君が姿を見せた。 「望愛、おはよ…」 まだ眠そうな顔をしながら本日二度目の挨拶。 「…お、おはよう、雅也君。あの、あの…渉さん、来てくれてて…」 私が言いかけると渉さんが隣から一歩出た。 「おはようございます。遠野です。ご挨拶させていただきたいと思ったんですが、まだお休みでしたら出直します」 「…いいよ。俺も話がしたいし。その前にシャワー浴びてきても?」 「もちろんです。ゆっくりしてもらって大丈夫です」 渉さんが快くそう言うも、なぜか雅也君は無表情のまま。そして、間を置いて彼らしくない作り笑顔を浮かべると思わぬことを口にした。 「俺がゆっくりしてる間に望愛と何かするつもりか?」 「え? いや…そんなつもりは…」 「冗談だよ。すぐに出て来るよ」 雅也君はバスルームに入っていった。 ドアが閉まるのを確認して渉さんが私を見る。いつも自信あり気な凛々しい顔が、珍しく困り顔になっていた。 「…どうやら歓迎されてないみたいだな」 渉さんは小さな息を吐きだした。
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