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彼の言葉や仕草はどこか俺に見せつけるような雰囲気があった。
「雅也君、そんなこと言ってないで早く服を着て!」
望愛が彼の手をはらいながら言うと、彼の視線は俺の方へ向いた。彼は望愛には注意されっぱななしだがそれさえも喜んでいるのか顔には余裕が滲んでいた。
「夕べもね、懐かしくなって昔よくやってたみたいに風呂上がりに俺が望愛の髪を乾かしてやったんですよ」
…望愛の髪を……
「そしたら気持ちよくなったのかウトウトし始めて―――」
「雅也君! そんな話、別に今しなくていいでしょ? それより渉さんのこと…待たせちゃってるから…」
さっきから望愛がそのことを気にしていたのはわかっていた。俺が来てから望愛は落ち着かず何度も俺に謝っている。だけど、実の兄でないから彼に『早くしろ』とは言えないのだ。
「ああ、そっか。社長さんだから忙しいもんな」
「すみません」と彼は俺を見た。
「いえ私なら大丈夫です。今日は一日予定を空けてますから」
「それは…良かった…」と彼はゆっくりと返事をしてから望愛に向き直った。
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