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俺の下げた頭の上からかすかな笑い声が聞こえた。 「…望愛から何て聞いてるか知りませんが、そんなにかしこまらなくていいですよ。別に俺は望愛の兄でも父親でもない」 彼は笑いながら椅子を引くと「まあ座って話しましょうよ」と俺にも座るように促した。 俺が座ると彼は息を吐き出し、テーブルの上で手を組んだ。 そして藪から棒に話し出した。 「あなたみたいな(ひと)にとって、田舎から来た望愛は物珍しくて、面白かったでしょう?」 「え?」 なんのことかわからず思わず声がもれたが、彼はそんなことは気にもせずに話を続けた。 「都会に憧れて、大企業の社長という存在に憧れ、金持ちの暮らしに憧れ、あなたが見せてくれる世界に望愛ははしゃいだでしょう? 喜んだでしょう? そんな反応をあなたは思う存分楽しんだはずだ」 「あの、何をおっしゃっているのか…」 困惑する俺を置いてきぼりにして、彼は途切れることなく言葉を放つ。 「でも、もう十分でしょう? 望愛を俺に…俺たちに返してください」
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