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…返す…?
咄嗟に言葉が出てこなかった。
なんの冗談だ? と思うのに、
目の前の相手が大真面目な顔をしているので混乱したんだ。
「…あの、それはどういう…」
やっと口を開いたものの言葉は詰まった。
「どういうって、そのままの意味ですよ。俺は望愛を連れて田舎に帰るつもりだ。向こうで…望愛の母親にもすぐに会える距離で、いや、何なら一緒に暮らしてもいいと思ってる」
「…え? あ…ええと…でもそれはお兄さん…いや…」
「浅田だよ。浅田雅也」
そこで初めて、相手は俺に名乗った。
「それは…浅田さんの意向でしょう? 私は望愛とは将来を見据えてお付き合いしています。もちろん、結婚も考えています」
「でも、」と彼は俺の話を遮った。
「それも…あなたの意見に過ぎませんよね? 望愛の意思じゃない」
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