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「―――わかりました。私もすぐに向かいます」 電話を終えて振り返ると望愛が心配そうに俺を見ていた。 「…悪い。E工場でトラブルだ。火曜には新作の試作品を出す約束になってる。…昨日までは順調だと連絡があったのに…。メーカーの技術者たちにも休日に出てきてもらわなきゃならないから俺も行かなきゃならない」 望愛からは二つ返事で「わかりました」と返ってきた。 「私は――」 「望愛は休んでていい。話は帰ってから必ずする。今夜は一緒にいたい」 「…渉さん…。わかりました。待ってます。私に出来ることがあれば連絡ください」 「ああ」 「…いってらっしゃい」 望愛に送り出してもらえる時はいつだって、どんな難題にだって立ち向かえる気がする。 望愛を抱きしめたい衝動に駆られながらも望愛の奥にいる彼の存在が気掛かりでできなかった。 そして、その彼が「せっかくの休みが、大変ですね」と労いの言葉をかけてくるが、あんな話を聞いた後ではそれも本心とは思えなかった。 俺はそれには「いえ」とだけ短く返し、望愛に向き直った。 「行ってくる」 望愛はそれに応えるように最後は少し硬いながらも微笑み、俺を送り出してくれた。
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