310人が本棚に入れています
本棚に追加
――Side望愛
…渉さん…
渉さんを見送ってから数秒間、渉さんの残像を見るようにその場で佇んでいるとすぐ後ろに雅也君が来ていた。
「忙しい人だな。いつもこんな風に休日も一緒に過ごせないのか?」
「…いつもじゃないよ。今は新規事業を成功させるために渉さんも必死なのよ。職場で何かあった場合は全部自分の責任だからって…いつも気を張ってる…」
私は再び、渉さんが出て行ったドアを見つめた。
「…へえ。そんな彼を見てて…望愛が辛くなってるんじゃないのか?」
「そんなことないよ」
私は顔を雅也君に戻した。
「そうか? そんな心配そうな顔して」
「…それは…心配にもなるでしょ。私は渉さんの秘書でもあるんだから、仕事の上でも気になるし…。何か私にも出来ればいいんだけど…」
私は小さく息を吐いた。
「やめろよ。休日にまで仕事の心配とか。っていうか、望愛、いつもこんな風にプライベートと仕事がごっちゃなのか? これじゃあ彼だけじゃなくて、望愛まで全然休めないじゃないか」
雅也君はそう言って腕組みをすると片方の肩で壁に寄りかかり、顔を斜めにして私を見た。
「だから、彼との付き合いは反対なんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!