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その後、母の病室に寄ると、雅也君の言ったとおり母はベッドで眠っていた。点滴をしてもらって少し楽なのか寝顔は穏やかだったが、気のせいか、前より少しだけ痩せて見えて呼吸の音は少し荒く、苦しそうだった。 いつも元気な母のこんな姿を見るのは辛かった。 なぜか涙が込み上げる。 「大丈夫だって言ったろ?」 雅也君が私の頭に手のひらを乗せた。そして、その手をゆっくりとすべらせて私の肩を抱いた。 「おばさん、ちょっと我慢しすぎたんだな。先生も言ってたよ。もっと早く病院に来なさいって。ここにいれば安心だしすぐに良くなるよ」 私は「うん」と頷いたが声にはならなかった。 自分の身体が震えていた。 たんに風邪をこじらせただけだとわかっても、病室で眠る母の姿はただただ衝撃だった。 父を亡くしてから考えもしなかったけれど、いつか母もそうなってしまったら―――。 その時、雅也君の手が思い切り私を引き寄せ、私を自分の胸に入れて抱きしめた。 「大丈夫だ。俺がいる」 雅也君の体温が伝わってくると言葉に出来ない安心感に包まれる。 幼い頃、寂しい時や不安な時は…いつも雅也君がこうしてくれた。 その度に私は…こうやって行き場のない不安から救われていた。 今は一緒にいてくれる雅也君の存在が大きかった。 「…ありがとう」 私は腕を伸ばし雅也君のシャツを掴んだ。
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