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カエル取り
小学校低学年の頃は男の子とばかり遊んでいました。校庭でボール遊びはもちろんのこと、校舎全部を使って「探偵」をしたり。
私は「探偵」と呼んでいましたが、ケイドロとか言う所もあるみたいですね。警察と泥棒。
私達の学校では探偵と盗人に分かれて追いかけっこする、要は隠れんぼです。盗人が逃げて、探偵が捕まえる。泥棒ではなく盗人(ぬすっと)と言う響きが、何とも関西の小学校らしいですが。
ある時から「カエル取り」と言う遊びが男の子達の間で流行りました。田んぼに行ってカエルを取る。ただそれだけなんですが、自転車で20分ぐらい走らないと行けない田んぼに行く、というだけで小さい頃の私には冒険に行くみたいで楽しかったのです。
いつも男の子の誰かが自転車の後ろに乗せてくれました。二人乗りはもちろんその当時も禁止でしたが、例の如く、良い様に言えば大らかな昭和の時代です。ヘルメットもありません。日差しが強いと、男の子の誰かしらが自分の帽子を私の頭に被せてくれました。
今考えたら逆ハーレムですが、所謂「こまめ」ってやつですか。誰かの弟とか妹とか自分達より小さくて弱い立場の子には、特別ルールで遊んであげるみたいな?そういう存在だったんだと思います。
カエルを取っても家には持って帰りませんでした。今なら触る事も出来ないです。その頃は触るのは平気でした。でも、中指の付け根にイボが出来て、イボガエル触ったからかな?とちょっとイヤな気持ちになったのは覚えています。イボは海に行った時にポロッと取れました。塩水が効いたんか?それも謎です。
何度目かのカエル取りに行った時、オタマジャクシがいました。ちょうど産卵の頃だったのか大量に。
オタマジャクシを手ですくって水を入れた小さいバケツに入れました。頭がまん丸でシッポがピロピロしてて可愛い。私が喜んで可愛い可愛いと言うので、男の子がバケツごと持って帰り、とオタマジャクシをくれました。
その時は「ありがとー♪」と喜んで家に持って帰りましたが、これはどう考えてもお母さんに「捨てて来なさい」と言われるヤツだ、と気が付きました。
大きくなったらカエルになるし、私もちょっと怖いぞと。
途方に暮れた挙句に、家の中庭に大きな石があって、窪みに水が溜まっている、そこにオタマジャクシを水ごと離しました。
オタマジャクシが何匹いたのか覚えていませんが、そんなに広くも深くもない石の窪みでは、とても育ちそうにないのに、子どもの、いや幼い私の残酷さにゾッとします。
次の日バケツを学校で返して、オタマジャクシの事はそのままほったらかし。エサすら準備しませんでした。怖い怖い……
しばらくしたある日、お姉ちゃんの悲鳴が聞こえました。慌てて様子を見にいくと、中庭で洗濯物を干そうとしていたお姉ちゃんが泣いていました。
「カ、カエルー カエルが大量発生してるー」
オタマジャクシは私の酷い仕打ちにも負けず、カエルへと成長していました。
庭にカエルがピョンピョンとあっちこっちで飛んでいて、お姉ちゃんもお母さんもしばらく中庭に出入り出来なくなりました。
「アンター!!!」
お姉ちゃんの怒りが炸裂し、二度とオタマジャクシを持って帰りません、と約束しました。
カエル取りにはその後も何度か行きましたが、男の子の一人がブロック塀にカエルを叩きつけて遊んでいるのを見てからは行かなくなりました。
「もうあんな事せえへんから」
と誘われても頑なに行かないと言い続けて。
自分のことを棚に上げて、その男の子を責めるとは。いやはや理不尽極まりない。
幼い頃を思い出すと、本当に自分のことがイヤになります。
とりあえずお姉ちゃんを恐怖に陥れはしましたが、オタマジャクシが立派なカエルになってくれて、感謝しています。ありがとう、そしてごめんなさい。オタマジャクシさん。
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