ブラック・ジャックごっこ

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ブラック・ジャックごっこ

 幼稚園だったか小学校低学年だったか、そのくらいの頃だと思います。手塚治虫先生の『ブラック・ジャック』の漫画を読みました。  幼くて読解力が足りなかったせいもあり、私が一番心惹かれたのはストーリーというより手術シーンでした。  さっそくひとりで出来る『ブラック・ジャックごっこ』を考案しました。    粘土遊び。ちなみに昭和の粘土は、今の様にキレイな色が付いていたり、いい匂いがしたりするものではありません。なんとも言えない鼠色というか、おどろおどろしい灰色の、臭〜い油粘土です。  その粘土でまず人体を作ります。全身の人型を作ったら、そのお腹を凹ませる、穴を掘るというかお腹部分に空洞を作りました。次に粘土を丸めて小さいものを何個か作ります、コレが臓器です。  粘土で作った臓器をお腹の空洞に詰めて、詰め終わったら、上から薄く伸ばした粘土をお腹の部分に被せて塞ぎます。境目もキレイに引っ付けたら爪楊枝の出番。  爪楊枝で中の臓器もどきを傷つけない様に、そおっとお腹を裂きます。そしてお腹を開いたら中の臓器もどきを爪楊枝の先ちょで突き刺して摘出。何個か摘出した後、またお腹を塞いで終了。  この猟奇的な遊びに一日中熱中しておりました。  姉兄はドン引きし、祖父は「ちゃんと(おなか)閉じたれよ』と悲しそうに言いました。  そして母はと言うと、「気色わるっ!」と言っただけでほったらかしでした。「ちゃんと手ぇ洗いやっ!」とは言われましたが……  もし自分の子どもがこんな遊びを一日中していたら、と思うと恐怖です。しかも楽しそうなのです。怖っ……  私には母の様な、よく言えばおおらかさはないなぁと思いました。思い返せば、人に迷惑をかけたり、自分で責任が取れないような事でない限り、母に「やめなさい」とか「こうしなさい」と言われた事があまりない様に思います。  大物なのか何も考えていないのか、どちらにしてもやっぱり母は偉大だなとあらためて感じた思い出でした。
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