3人が本棚に入れています
本棚に追加
気が付くと私は公園にいた。
あの公園だ。
勿論、現実の公園ではなく、SNL世界の公園だ。
これで本当に悠人が来たら、あの二人の運命の結びつきは本当に奇跡的だと思う。しかし、あの二人の運命に振り回されてきた私は、あの二人の運命というものを一番に信じてきた。
私は逸る気持ちを抑えて公園の中のベンチに座った。
呼吸を整える。まだ、少し気持ちが昂っていた。
そうこうしていると、公園に人がやってきた。
見覚えのあるその顔を見た瞬間、私は運命というものに初めて感謝した。
間違いなく、青山悠人だ。
「悠人くん!」
私は駆け出していた。一刻も早く、悠人に気持ちを伝えたかった。
「詩織ちゃん!」
悠人も私に気づいたようで、私に声をかける。
「やっぱり会えたね。しかも……あの時の公園で」
「あぁ、本当に会えて良かった。探しにきて良かったよ、中学の時の思い出のこの公園に」
どこかちょっとした違和感を覚えた。
あの二人にとってこの公園は運命的な出会いをした場所だ。それこそ中学の頃の話なんかは比較にならないほど二人は出会いの思い出を大切にしていた。
そして、悠人は詩織の事を普段呼び捨てにしていた気がする。
「あなた……誰?」
私は思わず後ずさりながら問いかける。
私の問いかけに、悠人の顔をしたものはバツの悪そうな顔をして頭を下げた。
私はその仕草には見覚えがあった。
「北江……くん」
「……分かっちゃうもんなんだな。自分では完璧だと思ってたのに」
「詩織だったら気付いてなかったかもね」
「えっ……君は?」
「わりと良いやつの叶だよ」
私がそう返すと、彼は得心を得たように頷いた。
お互いの状況が分かったところで二人して、その場でへたり込んだ。
「上手くいかないもんだな」
「そうね。あの二人の運命が強すぎるのよ」
「あの二人はどこか別の場所で一緒になってるのかな?」
「そうね、きっとそう。運命は私に振り向かないって事ね」
「達な」
「そうね。でも、私達のこの状況もすごいと思わない?」
「まさか二人して同じ事を考えて実行するとはね」
「まぁ、そのせいで上手くいかなかったわけだけど」
私がそう言うと北江くんは苦笑した。
「これからどうするんだ?」
「決めてないよ。まぁ、適当にこれから決めるよ」
「もし嫌じゃなかったら俺と一緒に過ごさないか?」
「うーん、まぁ顔だけは私の好みだし、それも良いかもね」
「顔だけ好みはこっちの台詞だ」
なんだか可笑しくなって二人で笑い合った。
決して私の思い通りにはならなかったし、振り回されてばかりだったけど、そんな運命もちょっとは悪くないなと思えるようになった気がした。
最初のコメントを投稿しよう!