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「えっ」
「さっきも言ったでしょ? ここでは配信とお金なの。ここまでは初心者用の基本的な概念とかマナーだったけど、これ以上のアドバイスが欲しかったら相応の見返りがないとね」
アリスの言葉にあずみは目を白黒させていた。
「お金取るんですか!?」
「そうよ。ただより怖いものはないのよ。特に、この世界ではね」
相変わらず手を出しているアリスにあずみは逡巡しているようだった。
そして、もぞもぞとポケットを探ると小さな小石を出してくる。
「なに? これ」
と聞いたがアリスは正体がわかっていた。Lv1のアイテムボックスに入っている通称キラキラ小石だ。ほとんど価値はないが少額のお金と交換できる。
「あの。今、持っているのそれしかなくて。あの、それじゃ足りないのわかっているんですど。でも、本当にそれしか持っていなんです」
あずみは両手にちょこんとキラキラ小石を乗せて恥ずかしそうにアリスに差し出した。
それを見て、アリスは笑い出してしまった。
「あの、やっぱりダメですよね」
と寂しそうなあずみに対して、アリスは「違う違う」と手を振る。
「気持ちはもらっておくわ。それなら、アドバイス料はツケにしてあげるから心配しないで、あはははは」
大通りの真ん中で大笑いしているアリスを通行人たちは遠巻きにしていた。
***
「さぁ、ここがこの街の中心にしてモニュメント『大砂時計の広場』だよ」
アリスが指し示した先には巨大な砂時計が鎮座した広場があった。
砂時計を中心に人々が行き交い、屋台が出ている。待ち合わせらしい人もいれば、なにかパフォーマンスをしていたのだろうか、台座と道具を片付けている人もいる。
クラシカルな装飾が施された砂時計の砂は、現在、その大部分が砂時計の上の部分に溜まっている。
「大砂時計、ですか」
「そう。これがこの異世界の中で唯一、時間を示しているんだ。といっても半年に一回ひっくり返るっていう大雑把なものだけどね」
「へぇ……」
あずみはに近寄って大砂時計を見上げた。
大時計の砂は、わずかに白みがかった砂色をしている。
あずみは「ビーチの砂みたいな色ですね」と感想を言っていた。
「ねー、綺麗だよね。これが……」
とアリスが言いかけた時、少年が一人、大砂時計に近寄ってきた。
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