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「えっ!」
女アバターは驚きの声を上げる。そして、ダガーを深く突き出しすぎたのだろうそのままスケルトンごと倒れ込んだ。アリスの首の上に。
「いやだぁ、もう! ああああああ」
『wwwwwwww』
『さいこう!』
『アリスちゃんドンマイ!』
【サチコ♡さんが900ルクス課金しました】
【オーシャンさんが2000ルクス課金しました】
【٩( ᐛ )وさんがポーションを差し入れしました】
【一番星さんが1700ルクス課金しました】
【おもちさんが1200ルクス課金しました】
目の前で起きている混乱に課金額もどんどん上がっている。
「みんなぁ、ありがとうね! うぐ」
「いやぁぁ、くびがぁぁぁぁ」
アリスの生首を眼前で見ることになった女アバターは金切り声のような悲鳴をあげていた。
***
アリスは最後のスケルトンの頭部を破壊するとくるりと一回転してマーチに向かってポーズを決めた。
「きょうも配信を見てくれてありがとう! また、明日も20時にここ紫紺の洞窟徘徊配信しまーす。みんな見てね!」
ばいばい! とマーチに向かって手を振って視聴者に終わりの挨拶をする。
『おつー』
『おつかれー』
『今日は神配信でしたwwww』
『明日もぽろりしてね~』
マーチから次々に視聴者から挨拶が返ってくる。
アリスは可能な限り、コメントを拾うと返信を返していた。
「それじゃ、またね!」
もう一度、手を振って終わりの挨拶にかえるとマーチに合図をして配信を切断する。
真顔に戻ったアリスはくるりと振り返る。アリスの足元に座り込んでいる女アバターに向かって冷たい視線を投げかけた。
「それで言い訳はあるわけ? 他人の配信に入り込んじゃダメでしょ」
「ご、ごめんなさい」
「ごめんなさいで済んだら自警団はいらないの」
アリスの凍えるような詰問に女アバターは肩を振るわせる。耳をすませると鼻をすする音が聞こえてくるので、どうやら泣いているようだった。
「はぁ」
アリスはわざとらしくため息をつく。
「とりあえず、顔を上げてくれる? 話しずらいじゃない」
「はい……」
アリスを見上げる顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃだった。
「あの、ほんとうにごめんなざい……」
「それはもう、いいから。あなた初心者でしょ? いい? コラボならともかく他人の配信に入り込まない。これは最低限のマナーだからね?」
「はい、すみま、いや、わかりました……」
そんな女アバターを赤い魚がじーっと見つめている。
「この魚があなたのマスコット? あ、きちんと配信切ってあるでしょうね」
「はい、切ってあります。あの、本当にすみませんでした」
女アバターはぺこりと頭を下げる。
「まぁ、いいや。僕はこれで帰るから。あなたも配信するなら、顔を拭いてからの方がいいよ。じゃ」
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