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アリスはメイスをマーチに向かって突き出し、格納させると踵をかえした。
そこへ女アバターが縋り付いてくる。思わず蹴り上げそうになったアリスは
「あぶないじゃない!」と声を荒げる。
「ま、待ってください」
「なんなの!」
「あの! いろいろ教えてくれませんか! お願いします!」
「はぁ!? なんであなたに僕が教えなくちゃならないの!」
「もう、本当に訳がわからないんです! マナーとか配信の仕方とか! お金とか! ダンジョンも意味がわからないし……。お願いします!」
女アバターは必死の力でアリスの足にしがみついてきた。
「ちょっとやめてよ! あみタイツ伸びちゃうでしょ! 高いんだからこれ!」
「お願いします!」
「あー、もう! わかったから! 教えるから! 引っ張らないで!」
必死にしがみつく女アバターに、必死に逃れようとするアリス。女アバターは無我夢中なのだろうか、アリスのバニーガール衣装を引っ張るのでたまらない。
配信はすでに終了しているが、ここでそれこそ『ぽろり』をしてしまってセンシティブ判定を喰らってしまっては眼も当てられない。
アリスは首が落ちるのは構わないが、エロで稼ぐつもりは毛頭ない。
ましてや、センシティブ判定をされてそれが万が一「垢BAN」の対象になっては死んでも死にきれないからだ。
「お、お願いします~!!」
「わかったてば! もう!」
そんなやりとりをしていると洞窟の奥から軽い足音が複数聞こえてくる。
「ほら、またスケルトンが来ちゃうじゃない!」
「あ、え、はい」
「配信していないところでモンスター倒しても儲けにならないから移動するよ」
「わ、わかりました」
「テレポ石くらい持ってるでしょ? さっさと街に帰るから」
アリスがマーチからテレポ石を取り出していると女アバターは「えっ」という表情をしている。
「どうしたの? はやくして」
「あの……。テレポ石ってなんですか?」
もじもじと恥ずかしそうにいう女アバターにアリスは呆れてため息をついた。
「本当に初心者なのね。よくLv3まで来れたじゃない。まぁ、いいわ。貸してあげる。貸すだけだからね!」
アリスは念をおすと、マーチから予備のテレポ石(正式名称は転送石という)をとりだし女アバターに投げて渡した。
「あ、ありがとうございます」
「街へ移動って言って、足元に叩きつけて。そうすれば街のゲート前に出られるから。そこで待ってなさいよ」
「はい!」
女アバターは言われた通りにテレポ石をしようする。一瞬で姿が掻き消えたのをアリスはため息をついた。
「変な縁ができちゃったじゃないの」
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