3人が本棚に入れています
本棚に追加
新人JK配信者が配信を頑張るよ
「お、アリスちゃん。久しぶり。元気かい」
「元気だよ~。おじちゃんも元気そう。商売どう?」
「ぼちぼちだね。今日はまだ残っているよ。豚の串焼き、食べていくかい?」
「食べる! 二本ちょうだい。あずみちゃんも串焼きでいいでしょう?」
「はい……」
「お、その姿は新人だね。おじさんもここにきたばかりの頃は苦労したよ。頑張りな」
「は、はい。ありがとうございます」
アリスは2本分のお金を払うと屋台の店主に手を振って歩き出した。
あずみに串を一本渡す。アリスは肉にかぶりついた。大きな串に刺さった大きな肉はジューシーで美味しかった。
「おいしいです……」
「でしょ、あそこの屋台は当たりだよ」
「豚の串焼きって、ここにも豚がいるんですね」
「うーん」
あずみの感想にアリスは口ごもった。
「豚っていうか、豚っぽい生き物というか、豚っぽいモンスターかな」
「えっ」
アリスの発言を聞いてあずみの顔はゆがんだ。ゲテモノを口にした時の表情だ。
「ここではね、似た生き物で作った似た料理をそれっぽい名前で呼んでいるの。豚っぽい生き物の肉の串焼きだから豚の串焼き。鳥に似た生き物を揚げてあれば唐揚げ。そういうことだから」
「で、でも……」
「いい? 食材については深く考えないの。食べられなくなるよ」
アリスが声を低くしてあずみに忠告した。
アリスの態度の真剣さに気をされたのだろう、あずみは「はい」と素直に頷いた。
あずみは串焼きをじーっと見つめている。食べようか食べまいか。そんな葛藤をしているのだろう。
「いらないならもらうけど」
アリスが手を差し出しながらいうと、アリスは首を大きく振った。そして、意を決したように串焼きに再びかぶりつく。
「美味しいでしょう?」
「……。美味しいです」
「で、あずみちゃんは何が知りたいの?」
歩きながらアリスがあずみに問いかける。今歩いているのは、ゲート前から街の中心に向かっていく大通りだ。といっても都市計画があるわけではないので道幅はまちまちだし、お店や屋台も乱立している。
「ぜ、全部。です」
「へぁ」
あずみの返答に思わず変な声が出たアリスだった。
「全部とは大きく出たわね」
「だって、なにもわからないんですもん」
ちょっとだけ拗ねたような声音のあずみだった。きっとあずみちゃんはアバターの外見どおり若い子なんだろうな。と思う。
お金さえあればアバターで外見はいくらでも変更できる。実年齢が外見通りとは限らないのがこの世界だ。
「つまり、なにも知らないってことでいい?」
「はい……」
あずみは恥ずかしそうに俯いた。
最初のコメントを投稿しよう!