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「なら、ますます頑張らないと。実力もお金もないのに帰るなんて無理だよ」
大通りの真ん中で立ち止まって喋っている二人を他の通行人たちが迷惑そうに避けて通っていた。
睨みつけていくるものもいる。
「ここって、どこ、なんですか?」
「どこって、場所を聞いているの? ここは街の中心に向かう大通りだよ。治安のいい場所だから安心して」
「そうじゃなくて、その、ここは日本、なんですか?」
「あー」
あずみの質問にアリスは上を見上げて考え込んだ。頭上には空がない。代わりに天井のような部分が淡く発光していた。アリスはなんて答えようかと思案した。
「ここはね、地球じゃないの。たぶん」
「えっ! ど、どういうことですか!」
「ちょっと落ち着いて」
あずみはアリスに詰め寄ってくる。アリスは落ち着くようにジェスチャーをする。
一瞬、周囲の視線があずみに集中して、また、喧騒に戻っていった。
顔を真っ赤にしたあずみは怒っているよなびっくりしているような表情をして、立っている。
「たぶん、だからね。そこのところ勘違いしないで」
「たぶんて、どういうことなんですか」
「だって、よくわからないんだもん。みんな、気がついたらこの世界のダンジョンのLv1にいた。そこから、簡単な説明を聞いたらあとはご勝手に。あずみちゃんもそうだったでしょ?」
あずみは渋々といった感じに頷いた。
「この世界にはさ、いろいろな配信者がいるわけ。そのなかには「この世界の秘密に迫る!」みたいなテーマで配信しているのもいるんだよ。そういう配信者の成果の一つが「ここは地球ではない」ってことなの」
「それは本当なんですか」
あずみは受け入れがたいと表情で訴えていた。気持ちはわかる。
「たぶんね」
「さっきからたぶんばっかりじゃないですか」
「だって、答えを教えてくれる存在がいないんだもん。すべては「たぶん」
「だろう」以上のものにはならないんだよ」
「私はてっきり、なにかのゲームなのかと……」
「それは違うよ。僕たち配信者は、この世界を説明するためにゲームの用語を使って説明したりする。それはその方が説明しやすいっていうだけ。実際にゲームなわけじゃないんだよね。第一、もしも地球に存在するゲームだとしてこんな、肉体を伴ってゲーム内に没入するゲームはないって」
「……」
「それじゃ、ここはなんなんですか」
あずみは俯いていた。なんだか泣きそうな声をしていた。
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