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たくさんのんだ
ところが、今年、厚子は夫と喧嘩した後にいつもだったら向精神薬でのODだけだったのに、睡眠薬でのODをした。
向精神薬でのODは大抵途中で気分が悪くなり、救急搬送されるまえにもかなり家で吐き戻しているので、病院に行っても点滴で帰ってこられることが多かった。
しかし、睡眠薬でのODは厚子も記憶がないほど、そのまま眠ってしまい翌朝まで病院のベッドにいた。
起きた時には驚いた。
機械でぎゅうぎゅうの部屋に厚子ともう一人だけが寝かされていた。
厚子が目を覚ますとすぐに看護師さんがいたのでICUではないが、それに近い環境で管理されている病室だったらしい。
夫はいなかった。
看護師さんが
「旦那さんは色々必要なもの取りに帰っているから。」
と、言い、厚子がトイレに行きたいと言うと車いすに載せられ、トイレは何とか自分で移動できた。まだフラフラだった。点滴と採血をして、採血の結果が出たらしく、
「よかったわね。旦那さんが来たら帰ってもよさそうよ。」
と、言われたが、上着は病院着になっていて、下は自分が来ていた物をそのまま身に着けていた。
眼鏡がないので全く物が見えない。
厚子はこれまでと同じ感覚でいたのだが、ほんとうならお昼くらいまで入院するはずだったようだ。夫はその荷物を取りに家に帰っていたのだった。
そして、初めて、救急の担当だったたまたま精神科の先生だった人から、担当医へのお手紙を書かれてしまった。
入院費も一泊ではあったが、ODでは保険診療にならないため、大分支払ったようだった。前日の喧嘩の件は覚えてはいるが、もう、申し訳なさしか残っていなかった。
夫は厚子が眼鏡をしていない事にも気づいていなかったし、眼鏡をどこに置いているかも知らなかったので、帰りもすべてタクシーを利用しないと帰れなかった。
厚子の視力は裸眼だと両目とも0.01未満。夫がついていたとしても歩いても帰宅は無理だった。
おくすりを沢山飲んで良いことは一つもなかった。
初めて病院から注意を受けた厚子は夫へも申し訳なく、自分でも情けなく、ODについては、心から反省した。
おくすりは処方通り。用法容量を守って飲みましょうね。
【了】
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