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シーソーモンスター 伊坂幸太郎
シーソーモンスター(2022/単行本は2019)
著:伊坂幸太郎
伊坂さんは中学生の頃から大好きな作家で、定期テストの試験期間中にグラスホッパーを読み始めてしまって一晩をふいにしてしまったこともある。最近は伊坂さんの本をあまり読んでいなかった。というのは興味がなくなったわけではなく、昔は目につけば本を買っていたものが、今は本が目に入る機会すら減ってしまい新刊に気づきにくくなってしまったからだと思う。
この本は複数の著者による合同企画『螺旋プロジェクト』の内の一冊で、そんな企画があったことすら今回初めて知った。企画内容は公式サイトに書いてあるものを見てもなんとなくふわっとしていて掴みづらかったけど、この一冊を読み終わる頃には大体理解できた。読んでこなかった作家さんにも触れられる面白い企画だな~と思う
『シーソーモンスター』と『スピンモンスター』の2編が収録されていて、舞台はそれぞれ昭和後期と近未来に分かれる。これまで読んできた伊坂さんの小説は基本的に現代が舞台のものが多いように感じていたので、過去の話や未来の話が書かれているだけでも新鮮に感じた。
『シーソーモンスター』は時代設定こそ過去ではあるものの、若干のファンタジー要素が入っている爽快なお話で、スパイとか一族の対立とか対立の審判、みたいな漫画/アニメ的な要素が違和感なく小説の文体の中で絡んでくるところは昔から変わらず好きだ。どうしても仲良くなれない相手と意地でもうまくやってやろう、みたいな気持ちはあるよなと思う。
『スピンモンスター』は自動運転されているはずの車の事故で家族を亡くした記憶を持つ青年(と思われる)が主人公の話だ。近未来がこういう社会になっている、とかこういう機械がある、みたいな設定にちょっと違和感を持ってしまうのは理系人間の意地悪な視点なのかもしれない。
水戸(主人公)が事件に巻き込まれていく様は自然で、場面の転換もそう多くなく、時間の飛びも少ない(過去の描写は挟まるけれど)話なので、一本道のドラマの面白さがある。
水戸に手を貸してくれる人間が何人も出てくるけれど、みんなそこそこの失敗をする。終わり方も独特で、これが良かったのか悪かったのかもよく分からない。それも含めて、(機械と比較したときの)人間ってこういうもの、という描かれ方をしているように感じた。
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